犬たちの性格は千差万別で、あまり物事に動じないタイプの子もいれば、ちょっとした環境の変化や物音、飼い主さんの不在に敏感に反応する子もいます。「落ち着きがなくて!」「チャカチャカなんです」「ビビりなんです」「シャイなんです」というよく耳にする楽しい会話の中にも、その程度はさまざまです。
場合によっては、かわいい個性を通り越して日々の暮らしに支障が出ていたり、犬たちの身の安全に影響があるほど大変な状況があるかもしれません。
実はうちの子もいわゆる「分離不安」の傾向があり、飼い主の不在でパニックを起こして排泄をコントロールできなくなったり、自分の歯が折れるほどケージの柵をコテンパンにして脱走したりした過去があります・・・
飼い主がいれば自分からすすんでクレートに入ってのんびりしている子なのに、本当にどうしていいか分からずこちらも大混乱でした
こうした行動は、年齢とともに自然と落ち着くこともあれば、運動やノーズワーク(知育遊び)で改善されることもあります。プラスαでできることとして、バレリアンなどのハーブの力を活用するアプローチがあります。
今回は、「ちょっと落ち着いて!!」と思うシーンで頼りになるバレリアンの持つ機能性について紹介します。
この記事はこんなことが気になる人におすすめ
・バレリアンってどんなハーブ?
・バレリアンを犬にあげるとどんなメリットがあるの?
・バレリアンの栄養特性や機能性は?
・犬にバレリアンをあげるときの注意点は?
・バレリアンはどんなシーンで活用するのがおすすめ?
バレリアンってどんなハーブ?
バレリアンは、和名ではセイヨウカノコソウと呼ばれており、他のカノコソウ属の植物と同様に世界中のさまざまな地域で古くから薬草として用いられてきました。
花は白からピンクががった可愛い小花で甘い香りがしますが、ハーブとして使用されるのは主に”根”の部分です。バレリアンの根は花の甘い香りとは対照的で、硫黄系の独特な香りを持っています。
ヨーロッパ原産のバレリアンは、古代ギリシャ時代から神経の高ぶりを抑え、深い眠りに導くハーブとして利用されてきました。中世になるとその効果の高さから人気のハーブとなり世界中に広まり、現在では海外の主要薬局方などで神経の緊張をやわらげる鎮静効果と安全性が認められ、一部の国では医療用のハーブとして承認を受けています。
具体的にバレリアンがどのような機序で鎮静効果をもたらすのかについては、明確なエビデンス(証拠)が不足している部分もあります。しかし、バレリアンの含有成分がストレスを軽減させる効果やリラックス効果があることで注目されているGABA(ギャバ)というアミノ酸の活性に関わっているという説が有力です。
また、鎮静以外の薬効として、催眠(入眠のサポート)、鎮痙(けいれんを緩和する)、鎮痛(痛みや筋肉の緊張を和らげる)、血圧降下、血管の拡張などの働きがあると言われています。
・古代ギリシャ時代から使われていた歴史あるハーブ
・ハーブとして使用するのは根の部分
・興奮や不安を和らげ、眠りを導く役割をもつ
・痛みを和らげたり、血圧を下げたりする働きもある
バレリアンは犬との暮らしのこんな悩みやシーンにおすすめ
バレリアンは感情を落ち着つかせ、勇気や前向きな気持ちをサポートしてくれるハーブと言われています。
このようなことから、特定の環境要因で緊張や不安がエスカレートしすぎる子やパニックになってしまう子におすすめできます。
よくある犬が苦手なシーン
・飼い主の不在(お留守番)
・雷・花火など、特定の物音
・トリミング・動物病院に行く
・他の子(犬・動物など)とすれ違う
犬たちの中には、このような日常シーンのちょっとした不安や恐怖が自分の中で渦巻いてしまい、自分でも自分の行動がコントロールできなくなってしまう子がいます。
結果として、家具などの破壊、いつまでも吠え続ける、攻撃的(噛みつき)な行動、トイレのミス、ウロウロと動き回る、触っただけでビクッとなる(あるいはキャインという悲鳴が出る)、自傷行動(体の一部をなめ壊す、毛をむしるなど)、などのいわゆる「問題行動」と呼ばれる行動につながってしまう場合があります。こうなると、飼い主さんも疲弊しますし犬たちも休まりません。
行動は問題なくても、何か特定のことが起きると必ずお腹を壊す、のように気持ちの揺らぎが生理現象の乱れにつながるタイプの子もいます
また、お散歩中などに興奮しすぎてしまい、他の犬や動物に吠え掛かったり突進してしまったりする子を落ち着かせたくて苦労している飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
バレリアンのように鎮静効果のあるハーブは、このような場面が思い当たるときに活用できるハーブです。レスキュー施設から保護された子たちや、過去に虐待などをうけて心の傷がある子にもおすすめです。
さらに、バレリアンには血圧を下げ少しボーっとした気持ち(寝る前のような)に導いてくれる働きもあります。この働きに注目して、シニア犬など眠りが浅く夜ウロウロしてしまう子にアプローチすることができます。
筋肉の緊張を解き、痛みを和らげたり血管や気管支を拡張したりする働きも確認されていることから、腹痛や心臓疾患などのサポートにも活用されることもあります。
バレリアンの活用方法と注意ポイント
うちの子の苦手な状況をあらかじめ予測できる場合は、その日のオヤツや食事にバレリアンのトライハーブやハーブブレンドを混ぜてあげてみる方法があります。
お留守番が苦手な子は、お留守番オヤツとしてコングなどを活用し、そこに入れるフードに少量のハーブを仕込んでおくのもおすすめです
また、ドライハーブのほかに、「チンキ剤」といってハーブや生薬の成分をエタノールなどに浸して抽出した液体も市販されています。一般的にはチンキ剤のほうが即効性が高いと言われていますので、チンキ剤を活用するときは緊張する場面の30~60分前に直接飲ませてあげるとよいでしょう。
特定の苦手シーンではなく「インターホン」や「救急車の音」など、予測不能に起きる要因でパニックになってしまう子や、日常的に落ち着きがない子、終始何かにビクビクしてしまっている子の場合は、毎日の食事に少量のハーブブレンドやチンキ剤を混ぜ与える方法があります。日々の食事に活用するときは、5日与えたら2日休む、など休息日を設けてみてください。
寝る前のひと時、飼い主さんと一緒にバレリアンの入ったハーブティを楽しむのもおすすめです。ハーブティはドライハーブやチンキ剤と比較すると、成分としては薄くなりますが飼い主さんと一緒に楽しむという効果がプラスされます。飼い主さんの気持ちが落ち着くと、犬たちも連動して落ち着いてくれるケースは珍しくありません。
バレリアンのハーブティは独特の香りや苦みがありますので、カモミールなどと合わせて飲みやすくブレンドされたものを選ぶのも良いですね
注意ポイントとして、バレリアンには血圧を下げて眠たくさせるような働きがあるため、もともと低血圧のトラブルを抱えている子やトレーニング前の集中したいシーンなどに使うことはNGとなります。
また、問題行動に悩む場合は、ハーブだけに頼りすぎず、運動やトレーニングで体や頭を健康に疲れさせることがとても大事です。
まとめ
バレリアンは何世紀にも渡り、抗不安薬や不眠の改善をするハーブとして用いられてきました。人にとっても日々の悩みやストレスを和らげてぐっすり眠る助けとなってくれますし、犬たちにもテンションのバランスをとるハーブとして活用できます。
お留守番後のこんなシーンは犬との暮らしアルアルです。
帰宅してこれに似通った状態を見た時は、情けなくなるやら途方に暮れるやら。。。うちの子が、なんだか楽しく遊んでいるうちに「やっちまった」だけならば、「やっちまった顔と部屋の惨状」を記念に写真をとって、ぶつぶつ文句を言いながらちょっといじわるで犬を無視したり、すぐ仲直りしたり。破壊された何かのことはさておき、もはや笑い話として楽しい思い出に変換してしまうしかありません!
しかし、パニックや不安で自制できずこうなってしまった子は、よほど必死で「楽しかった」という気分ではなかったことだろうと思います。これが行き過ぎて、誤飲や誤食、飛び出しの事故などにつながってしまうと一大事です。
このような場合は、その子の安全のためにも人の暮らしを健全に保つためにも、犬の気持ちが落ち着いてくれるように働きかけたいものです。体を動かしたり、マッサージをしたり、話しかけたり、、、その中の一部としてバレリアンのようなハーブを活用できるといいですね。
ワークショップで選べるハーブの中では
・ストレス&リラックス(ドクターハービーズ)
・胃腸ケア(ヒルトンハーブ ダイジェストサポート)
にブレンドされています。