たまごは、私たちの暮らしと切っても切れない仲の優秀食材。単に栄養豊富なだけでなく、黄色と白のハッピーな見た目や、主役から脇役まで料理のバリエーションの豊富さもあいまって本当に頼もしい存在です。
そんなたまごは、犬たちにも嬉しい栄養素をたくさん含んでいます。
今回は、身近な食材「たまご」の栄養特徴や機能性、白身と黄身の違い、犬との暮らしで活用できるシーンなどを掘り下げてみます。
この記事はこんなことが気になる人におすすめ
・たまごを犬にあげるとどんなメリットがあるの?
・たまごの栄養価や機能性は?コレステロールは大丈夫?
・卵黄と卵白でどんな違いがあるの?
・犬にたまごをあげるときの注意点は?
・犬との暮らし、たまごの活用シーンは?
たまごの栄養成分と機能性
「たまご」とひと口にいっても、実は鶏の卵とウズラの卵、そのほかの卵など、卵の種類によって栄養成分は多少異なります。一般的な「鶏卵」に注目してみると、、、
まずは犬に必要な10種の必須アミノ酸を全て含んだアミノ酸スコア100の食材であるということ。さらに、体に必要なオイル、カルシウム・リン・鉄・亜鉛などのミネラル類、免疫力を高めるビタミンA、抗酸化力のあるビタミンEをはじめとするビタミン類など、たまごは「ビタミンC以外のすべての栄養を含む」とも言われるほど栄養価の高い食材です。
中でも特徴的な機能性成分として、卵黄に含まれるレシチンという成分があります。
レシチンは、動物の細胞膜を構成している主成分で、脳神経系や血液、骨髄、心臓、肺、肝臓、腎臓、胃腸などあらゆる主要な細胞組織に含まれています。その主な役割は「水に溶けるものと油に溶けるものの橋渡し」。
水と油は本来溶け合うことがありませんが、体が必要とする栄養素は、水に溶けやすいものや油(脂質)に溶けやすいものが入り交じっています。レシチンには水と油を混ざり合わせてくれる乳化作用があり、いろいろな性質を持つ栄養素や酸素を体中に上手にいきわたらせてくれる役割を担っています。また、栄養を摂りこむ逆の経路で老廃物を流し出す役割も持っています。
たまごに含まれるレシチンは、酸素や栄養分を細胞に届け、老廃物を流し出す仲介役として重要なのです
そのほか、レシチンには神経細胞を活性化する働きや脳細胞の健康をサポートする働き、脂肪の代謝を促進することで肝臓機能をサポートしたりする働きもあると言われます。
なお、たまごの栄養については、「コレステロールが多く含まれるためドロドロ血の原因になるのでは?」という見解がありました。しかしながら、たまごはコレステロールと同時にこれを溶かすレシチンを含んでいるため、結果的には細胞内や血液中でのコレステロール値を調整してくれる食材であると考えられています。
もちろん、どのような食材でも摂りすぎは禁物ですが、たまごの脂質類はレシチンのおかげで消化性に優れた状態になっているところが特徴です。
たまご(鶏卵・全卵)の栄養特性
卵白と卵黄にはこんな違いが
さて、たまごを「白身」と「黄身」を分けてチェックしてみるとどうでしょう?
卵白と卵黄を分けてみるとそれぞれに特徴があり、薬膳の観点では別々の効能がうたわれています。
まず、卵の特徴的な栄養素のほとんどを持つのは「卵黄」です。上述のレシチンを含む脂質類、ビタミン類、ミネラル類やカロテノイドなどはほとんどが卵黄部分に含まれています。卵黄は栄養価が高い分、高カロリーであるという特徴があります。薬膳の観点では、陰虚(体液の不足)を補う食べ物であるとされ、血液系や心臓ケアのサポートにも活用されます。
一方の卵白の特徴は、ある程度のタンパク質を含みながら脂質をほとんど含まない、という点です。薬膳の観点では、過剰な熱を冷ましたり咳き込みがちなときのサポートに活用されます。
黄身と白身を比較
可食部100g当たりの成分
エネルギー kcal | 水分 g | たんぱく質 g | 脂質 g | 炭水化物 g | 灰分 g | |
---|---|---|---|---|---|---|
全卵 | 134 | 76.7 | 12.5 | 10.4 | 0.3 | 1 |
卵黄 | 330 | 50.3 | 16.1 | 34.1 | 0.2 | 1.7 |
卵白 | 46 | 87.9 | 10.5 | 0.1 | 0.4 | 0.7 |
特に脂質はほぼ全部が黄身の中。ひとつの殻の中に、隣り合わせでこんなに異なる部分が存在しているとは!
卵白だけが手元にあるときや、卵黄だけが手元にあるとき、このように異なる栄養源となるということも知っておくと良いかもしれません。
犬との暮らし たまごの活用シーン
このように、たまごには良質な栄養がぎゅーっと含まれており、気軽に取り扱える食材でもあることから、犬との暮らしにも活用できるシーンがあります。
たまごの栄養素は、タンパク質も脂質も消化吸収されやすいのが特徴です。また、たまご独特の味わいや香りが好きな子も多くいます。
ですので、まずは単純に健康を維持するための栄養補給として活用できます。健康的な皮膚、ツヤツヤの毛、筋肉の維持など全身に必要なタンパク質源として使うことができます。手作り食の場合、不足しがちなビタミン類や、鉄や亜鉛などのミネラル類も補給できますのでタンパク質源のローテーションにたまごを加えてみるのもおすすめです。
また、たまごに含まれるレシチンの働きに注目すると、コレステロール値のコントロールや肝臓ケア、認知機能障害のケアにも役立つシーンがありそうです。皮膚や粘膜の再生作用が高いという研究報告や視力ケアに関する報告もありますし、抗酸化作用のある機能性成分も多く含みますので、ケガや手術、病気からの回復期や、シニア犬のアンチエイジングにも活用できるシーンがあります。
たまごはこんな子におすすめ
・皮膚を健やかに、被毛をツヤツヤにしたい
・しっかりとした筋肉を維持したい
・手作りごはんの栄養バランスを整えたい
・肝臓の負担を少なく栄養を補給したい
・認知機能障害のケアをしたい
・病気やケガの回復期をサポートしたい
・シニア犬のアンチエイジングに
犬にたまごをあげるとき注意したいこと
日本は、生卵を食べる習慣がある世界でも珍しい食文化をもつ国です。これは、日本の鶏卵農家さんが、食中毒の原因の一つであるサルモネラ菌の汚染が起こらないよう衛生管理を徹底してくれているからで、日本ではスーパーで購入した普通のたまごを生食用として普通に食べることができます。
ありがたい!
こんなことが「普通」の国はそうそうありません。
このように日本のたまごは、とても厳格に管理されていますので菌の問題はほとんど気にしなくて良いと思います。犬たちも黄身だけを与える場合は生食で食べることができます。ですが、生の卵白の一部には消化しにくい成分が含まれるため、全卵や白身をあげる場合は加熱して与えましょう。
次に、食物アレルギーについての注意点です。ヒトの場合、5歳以下の幼児に食物アレルギーの症状がある場合、原因食物が鶏卵である割合が最も多いという事実があります。そのため、たまご=アレルギーになりやすい、というイメージがある人も多いかもしれません。実際、たまごにはオボアルブミンやオボムコイドという食物アレルギーの原因になる物質が含まれています。しかしながら、犬の場合、他の食材と比べて鶏卵でアレルギー症状が出る子が多いということはありません。
その子の体質よってアレルギーの原因となる食材はさまざまですので、人間のデータに引っ張られすぎずフラットな目線でうちの子を観察してみると良いかもしれません。
もちろん、たまごの高栄養を頼りすぎたり与え過ぎたりしないように、他の食材とバランスをとりながら「ほどほど」に活用することもポイントです。
・全卵や白身は必ず加熱する
・「たまごアレルギー」は、犬では人間ほどポピュラーではない
・高栄養なのでほどほどに
まとめ
焼いて良し茹でてよし、お肉のつなぎにもなるし、万能で美味しいたまご。卵かけごはんの艶やかさ、オムライスや出汁巻き卵のふっくら感、ラーメンの煮卵も、カレーやハンバーグに乗った目玉焼きも、私の暮らしのテンションを爆上げするパワーを持っています。
もしかしたら「体が欲している」栄養をもれなくもっているからこそ、なんだか本能的に嬉しくなる気持ちが止まらないのかもしれません。
たいていの犬たちもたまご料理が大好き!味付け不要でいつものごはんにちょっとトッピングするのもいいですし、オメガ3オイルやビタミンCを補給できる食材をちょっと組み合わせれば手作りごはんさらにアップグレードします。
たまごというと心配になるのはアレルギーやコレステロールの問題かもしれません。しかし、犬の場合は他の食材に比べてアレルギーのリスクが高いということはなく、コレステロールについてもレシチンの働きでむしろ血中濃度の調整役になってくれるというデータがあります。
ヒトも犬もちょっとハッピーになれる食材として、上手に取り入れられたらいいなと思います。