犬たちの健康に欠かせない栄養であるタンパク質。昨今は、市販のフードでも手作りご飯の食材としても、さまざまな種類の動物性タンパク質を選択できるようになりました。
しかしそうはいっても、動物性タンパク質の「基本のき」と言えば、やっぱりチキン。
チキンはなぜ、これほどいろいろなドッグフードのベースになったりオヤツに使われたりするのでしょうか?もちろんコストの面もあると思いますが、鶏肉には犬に嬉しい栄養がしっかり含まれているのです。
今回は、改めまして、犬ごはんの基本食材であるチキンについて、特に鶏むね肉について掘り下げてみます。
この記事はこんなことが気になる人におすすめ
・鶏むね肉を犬にあげるとどんなメリットがあるの?
・鶏むね肉の栄養価や機能性は?
・犬に鶏肉をあげるときの注意点は?
・鶏むね肉はどんな犬におすすめ?
・鶏肉の良さを引き出す調理法は?
鶏むね肉の栄養成分と機能性
鶏むね肉は、その名の通り鶏の胸の筋肉部分です。
鳥類の胸筋は羽を動かす(羽ばたく)時に原動力となる重要な筋肉で、肉の間に脂質がほとんど存在しないのが特徴です。ニワトリは飛べない鳥になってしまっていますが、この鳥類のもつ特徴は市販の鶏むね肉にもきちんと受け継がれています。
そのため、鶏むね肉は皮の部分を取り除くと純粋にタンパク質源として活用できる貴重な食材となります。また、そのタンパク質の「品質」も非常に優れていることがポイントです。
鶏(チキン)のタンパク質を構成するアミノ酸はとてもバランスが良く、犬に必要な10種の必須アミノ酸がもれなく全て含まれています。必須アミノ酸のバランスが悪くなると、タンパク質全体の合成量が不足したり、余ったアミノ酸の処理に余計なエネルギーを使ったりしてしまいますので、アミノ酸バランスが良いということは体に負担をかけず栄養を効率的に摂ることにつながります。
チキンの部位の中でも、むね肉は肉質がやわらかく火の通りが良いため、消化性にも優れています。このように、鶏むね肉は物理的にも構成成分的にも消化に優しい特徴を持っているため、子犬からシニア犬まで全てのライフステージで取り入れたい食材です。
さらに、鶏むね肉には、特徴的な栄養成分として「イミダペプチド」という2つのアミノ酸が結合してできた物質が含まれています。「イミダペプチド」は、鳥の胸筋や魚の尻尾近くの筋肉など、持続的に大きな力で運動を必要とする部位に多く含まれていると言われます。裏を返すと、この成分が長い時間羽ばたいたり泳いだりすることをサポートをしていると考えられており、「イミダペプチド」が筋肉の疲労回復に重要な役割を持っていることが分かってきました。
最近の研究では、筋肉疲労だけでなく脳の疲労回復にも効果があるという報告もあります。
適切な運動+イミダペプチドの組み合わせで、体と頭の疲れがスッキリするという報告があります。犬たちにの健康維持にもぜひ取り入れたい機能性成分ですね!
鶏むね肉の栄養特性
犬に鶏肉をあげるとき注意したいこと
栄養的にも消化の面でも良いことばかりの鶏むね肉ですが、犬たちにあげる時に注意が必要な点があるのでしょうか?
健康な子なら、特別な注意点はありません!
特別な注意点がない優秀食材、と言ってしまうとちょっとザツですが、鶏むね肉はまさにそういう食材です。
ただ、大前提や細かい点として以下のような注意ポイントがあります。
・チキンアレルギーの子はNG
・腎臓トラブルで食事制限をしている子は要注意
・他のお肉に比べると鉄分や亜鉛が少なめ
まず大前提として、チキンにアレルギーがある子は残念ながらあげることができません。上述の通り、チキンはその栄養価の高さとコスパの良さからいろいろなペットフードに活用されているため、必然的に体に取り入れる量が多くなりアレルギーのキャパシティを超えて症状が出てしまう子もいます。ただ、最近はいろいろな動物性原材料が選択できるようになり、チキンアレルギーの子はむしろ減っているように感じます。チキンという素材そのものがアレルギーの元になりやすいわけではありませんので、誤解がないように活用したいものです。
また、腎臓トラブルなどでタンパク質やリンの食事制限をしている子は注意が必要です。タンパク質やリンの制限が必要な子は、鶏むね肉というより肉類すべてに制限がかかります。ですので、この注意ポイントは鶏むね肉に限定するものではありません。最低限の量で効率的にタンパク質を補給したい場合にはむしろ選択肢となる場合がありますので、かかりつけの獣医師の先生に相談してみると良いかもしれません。
ミネラルバランスについては、牛肉やラム肉などの赤身肉と比較すると鉄分や亜鉛の含有量が少なめという特徴があります。チキンのアミノ酸バランスの良さを活かしつつ、他の食材やお肉も活用して全体で栄養補給できると良いですね。
鶏むね肉 おすすめの調理法は?
続いて調理方法です。これも難しいことは何もありません。
ポイントとしては
・加熱して与えること
・こがさないこと
の2点です。
犬たちの中には生肉についた細菌類に耐性が強い子もいますが、生食用として販売されていないお肉を使うときは、鶏肉に限らず加熱してあげるほうが安心です。特に子犬やシニア犬は、食中毒(カンピロバクター症など)を起こすと一気に体力を奪われますので要注意です。
加熱するときは、せっかくの良いタンパク質品質を活かすため「こがさない」ことがポイントです。
グリルしたお肉は見た目にも美味しそうで嬉しい気持ちになるのでNGではありませんが(嬉しい気持ちが犬に伝わります)、焼き目はほどほどにしておきましょう。栄養を十分に活かすなら、こがす心配のない茹で鶏(ボイル)がおすすめです。煮汁も一緒に美味しいスープとしていただきましょう!
鶏むね肉は加熱しても硬くなりすぎず繊維が細かくほどけていきますので、子犬やシニア犬にもおすすめです。嚙む力が弱い子や丸のみが心配な子には細かくほぐしてあげるとより食べやすくなります。
皮を取り除くかそのままにするかは、脂質やエネルギーを摂りたいかどうかで判断すれば大丈夫です。鶏皮は、犬たちにとっても風味が良くて美味しいものですし、ナイアシンなどの脂溶性ビタミンも含まれるため、決して悪者ではありません。ただし、ダイエット中でカロリーを抑えているときや、膵炎などの脂質代謝トラブルがある場合は取り除いてあげましょう。
・しっかり加熱してあげるのが安心
・おすすめの調理方法は、茹で鶏(ボイル)。ゆで汁はスープに活用。
・健康な子なら皮はそのままでOK
鶏肉を薬膳の観点からみると
鶏むね肉は、薬膳の観点からみても「気を補う(気虚の改善)」食材として分類されています。
前述の通り、科学的にイミタペプチドという疲労回復成分が多く含まれることが分かっていますが、薬膳の考え方でも胃腸のはたらきを高め、食欲を出すことで「気」を増やし、疲れを改善していく食材として認識されているのです。
また、温中降逆(おんちゅうこうぎゃく)といって、体を温め冷えを改善して体のバランスを整える食材と考えられています。
このようなことから、薬膳の観点でも、元気を出したい時や疲れを取りたい時、体が冷えてお腹の調子が悪い時などに積極的に取り入れたい食材と位置付けられています。
まとめ
今回は、身近な優秀食材「鶏むね肉」を掘り下げてみました。
鶏むね肉は、子犬やシニア犬の基礎栄養補給からアクティブな子の体力づくりや疲労回復サポートまで、幅広く使える素晴らしい食材です。
そのうえ、気軽に購入することができて栄養価も消化効率も良いため、使いやすさも抜群。ぜひ普段のごはんのトッピングやオヤツの素材として活用してみてください。
栄養価が高いのに注意点や調理法で難しい話がほとんどない、というところが鶏むね肉が「基本のき」たる所以ですね。
ワークショップでもベースのお肉として選べます!