犬のごはんを考えるとき、あるいはペットフードを選ぶとき、必ずと言っていいほど「良質なタンパク質が大事」というキーワードが出てきます。良質なタンパク質というのは具体的にはどんなものなのでしょうか?

お肉やお魚の種類こと?それとも組み合わせ?鮮度や加工方法?

このように「良質なタンパク質」を語るアプローチはいくつかありますが、今回は、タンパク質を構成する成分「アミノ酸」について、食材ごとの事例も交えて掘り下げてみます。

この記事はこんなことが気になる人におすすめ
・そもそもアミノ酸ってどういうもの?
・犬の必須アミノ酸ってどんなもの?人や猫との違いは?
・アミノ酸スコアってなに?
・手作りごはんやトッピングに使う食材のアミノ酸バランスはどうなっているの?
・植物性原材料からもアミノ酸が摂れる?

目次

そもそもアミノ酸とタンパク質の関係は?

タンパク質は、動物の体を作る主成分となる物質です。人も犬も、筋肉、臓器、皮膚、毛(被毛)、爪などはタンパク質が主成分です。また、生命活動を維持するのに欠かせないホルモンや消化酵素、免疫抗体などにも必要となるため、毎日のごはんでしっかり補給したい栄養です。

アミノ酸とは、そのタンパク質を構成している成分のことです。20種のアミノ酸がいろいろな組み合わせでつながることで、いろいろなタンパク質を構成しています。

アミノ酸は、タンパク質を作る部品のようなものです。
アミノ酸がひとつ足りないと欲しいタンパク質が完成しないので、部品が漏れなくそろっていることが大事です。

タンパク質は、ツヤツヤの毛や力強い筋肉づくり、生命維持に欠かせない
アミノ酸はタンパク質をつくる部品となる成分

犬に必要な必須アミノ酸って?

タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あります。そのうち、体内で合成できるものを「非必須アミノ酸」といい、合成できないものを「必須アミノ酸」と呼びます。

必須アミノ酸は、体内で合成できないので食事から摂取しなくてはなりません。「必ず食べなくてはならない」ということが必須アミノ酸と呼ばれる理由です。動物種によって体内で合成できるアミノ酸の種類が異なるため、必須アミノ酸の種類も異なります。

人間では9種、犬では10種、猫では11種の必須アミノ酸を摂る必要があります。

必須アミノ酸の比較 ヒト・犬・猫

人の必須アミノ酸9種は、各アミノ酸の頭文字をとって
風呂場椅子独り占め」と覚える人が多いです!
ェニルアラニン・イシン・リン・ソロイシン・レオニン・スチジン・リプトファン・リジン・チオニン

犬の場合は、+アルギニンです。「風呂場イス独り占め」と覚える人もいます。

猫の必須アミノ酸としてカウントされるタウリンは、正確にはアミノ酸特有の構造を持たないため、アミノ酸と別分類になることもあります。しかし、ペットフードの栄養を考える際にはアミノ酸として扱われることが多い成分です。

アミノ酸スコアの考え方

アミノ酸スコアとは、その食材に含まれるアミノ酸がどのくらい必要量を満たしているか、という指標のことです。

アミノ酸には「桶理論(おけりろん)」という法則があります。何かひとつの部品(アミノ酸)が少ないと、他の部品は余っていても合成できるタンパク質量は少ない部品に合わせた量しかできあがらない、という考え方です。

この考え方をもとに、ひとつの食材の中に含まれるアミノ酸が、必要量をバランスよく満たしており、結果として合成できるタンパク質の量が豊富になる食材を「アミノ酸スコアが高い」食材と位置付けます。

逆に、食材の中で特定のアミノ酸が不足しているために、全体のタンパク質合成量が少なくなってしまうものは「アミノ酸スコアが低い」食材となります。

アミノ酸スコアの考え方

アミノ酸スコアは、動物が必要なタンパク質合成量を満たせば100となります。

そもそもアミノ酸は動物の体を構成する成分ですので、肉や魚などの動物性食材は必然的にアミノ酸スコア「100」となることが多いです。

【アミノ酸スコア100の食材の一例(動物性)】
・チキン(鶏肉)
・ビーフ(牛肉)
・ポーク(豚肉)
・たまご
・サーモン(鮭)
・・・などなど

また、植物性原材料の中にも、アミノ酸スコアが100という食材があります。

【アミノ酸スコア100の食材の一例(植物性)】
・オートミール(えん麦)
・納豆
・・・など

アミノ酸スコアが高い食材は、それだけ必要なタンパク質を効率的に合成できるということですので「良質なタンパク質源」と考えることができます。

しかしながら、もしアミノ酸スコアが低い食材があったとしても、そればかり摂取せずに他の食材と組み合わせて全体量が確保できていれば全く問題ありません。タンパク質だけではない他の栄養素のことも考えながら、うちの子に必要な栄養のバランスを考えられるといいですね。

必ずしもひとつの食材でスコア100にする必要はなく、食事全体で考えれば大丈夫です。

犬のごはんによく使われる食材に含まれる必須アミノ酸の量

では、実際に、犬の手作りごはんとして一般的な食材やペットフードでメインのタンパク源となる食材のアミノ酸量はどのような内容なのでしょうか?

以下の表は、キヌア・オートミール・たまご・鶏むね肉・馬肉・さけ(サーモン)・ラム肉の7種類の食材について、犬の必須アミノ酸である10種がどの程度含まれているかを一覧にしたものです。100g当たりの含有量です。

食材のアミノ酸組成(参照:文部科学省「食品成分データベース」

数字を並べても全然イメージがわかない!!

ですよね・・・。グラフにしてみるとどうでしょう?

食材のアミノ酸組成(犬の必須アミノ酸10種)

このようにグラフにして見るとまずはじめに気づくことは、アミノ酸スコア100の鶏肉や馬肉でも、含まれるアミノ酸量にはガタツキがあるな、ということかもしれません。

例えばトリプトファンは、どの食材を摂っても少ない!です。大丈夫かしら?と心配になってしまいます。

しかし実は、トリプトファンは、そもそも動物側の要求量が少ないアミノ酸なのです。以下の図は成犬が摂取するとよいとされている目安のアミノ酸量をグラフ化したものです。

成犬のアミノ酸摂取推奨量

このように推奨量そのものがガタついている、ということも頭の片隅に入れておくと、アミノ酸スコアの概念を理解するのに役立つかもしれません。この線グラフのラインとアミノ酸量がなんとなく合っている食材こそが、犬たちにとって「アミノ酸効率の良い食材」=「良質なタンパク質源」ということになります。

もういちど、このグラフに戻ると・・・

食材のアミノ酸組成(犬の必須アミノ酸10種)

全体的に黄色の棒グラフである鶏むね肉のアミノ酸量の豊富さが際立ちます。また、グレーの棒グラフのたまごは、バラツキが少なく犬の要求量ラインに近い組成でアミノ酸全体を底上げしてくれそうな印象があります。

一方、植物性原材料は「タンパク質が多い」と言われる食材であっても総量としては動物性原材料にかなわないことがほとんどです。しかし、バランス良くアミノ酸を含んでいるオートミールやキヌアは注目すべき食材です。アレルギーがなければ、「おじや」ベースの手作りごはんに大活躍してくれそうです。

また、オートミールには「シスチン」というアミノ酸がお肉類より多く含まれています。シスチンはメチオニンから合成することができるため必須アミノ酸にはカウントされずグラフにも記載していません。しかし、シスチンがしっかり体内に入ると、必須アミノ酸であるメチオニンはシスチン合成ではなく他の役割に専念できます。

メチオニンやシスチンは被毛の主成分であるタンパク質「ケラチン」を作るアミノ酸です。ですので、フサフサ・ツヤツヤのうちの子を目指したい時には必要不可欠なアミノ酸と言えます。

小型犬や猫ちゃんでは、1日必要摂取量のタンパク質の最大30%が、皮膚や被毛の維持に必要なケラチンの合成に使われるとも言われます。メチオニンとシスチンはしっかり確保したいところです!

・鶏むね肉はアミノ酸スコアが高いだけでなくアミノ酸の総量が豊富
・たまごは犬の要求ラインに近いアミノ酸組成をもつ
・オートミールは被毛をつくるケラチンに欠かせないアミノ酸が豊富。

まとめ

今回は、犬たちのごはんに欠かせない「良質なタンパク質」について、アミノ酸組成の観点から掘り下げてみました。

・タンパク質は体を作る。生命維持に欠かせない
・アミノ酸はタンパク質を作る部品
・犬の必須アミノ酸は10種「風呂場アイス独り占め」
・動物性原材料はアミノ酸スコア100の食材が多い
・食材によってアミノ酸の構成が異なる
・個々のアミノ酸スコアにこだわりすぎず食事全体でバランスをとればOK
・毛並みが気になるときはメチオニンとシスチンが大事

カタカナが多くてややこしい分野ですが、うっすら知っておくだけでペットフードを選んだり、手作り食を作ったりする際のヒントになるかもしれません。

おおまかに、おおらかに全体を把握しながら、体を作る大事な栄養であるタンパク質をしっかり補給して元気で活発、ツヤツヤなうちの子でいてくれたら嬉しいですね。

アミノ酸スコア たまご

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